社会人カップルの勝男と鮎美。大学時代から続いた交際は6年目を迎えようとしていた。
同棲生活にも慣れ、そろそろ次の段階へ…と考えていた勝男だったが、そんな彼に訪れた、突然の転機とは―!?
慣れないながらに作る料理を通して、ザ・昭和男が今までの「あたりまえ」を見つめなおす、第26回手塚治虫文化賞・新生賞受賞作家、谷口菜津子の最新作!
ぶんか社
こういうのめっっっちゃ好き……。
令和時代にいまだ生き残る昭和男が、彼女に振られたことをきっかけに自分を見つめ直し、周りの人たちとの関係を再構築していくヒューマンドラマです!
主人公である昭和男のミソジニー的発想にはとにかくイライラするのですが、彼以外はほぼみんなまともで読者の代弁者になってくれるため、気持ちよく読めます。
「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」が好きな人には楽しく読んでいただける作品だと思います。
そしてなんと、「じゃあ、あんたが作ってみろよ」はシーモア読み放題の対象作品です😳
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「じゃあ、あんたが作ってみろよ」の魅力
Mr.昭和男!イラっとするけど応援したくなる絶妙なバランス
「おいしいよ。でも、一品酸っぱいおかずが欲しかったかな?」
うっっっるせぇぇぇ〜〜〜!!
じゃあお前が作れ〜!
と、タイトルの通り叫んでしまいたくなるような余計な一言で人を不快な気持ちへと陥れる男「海老原勝男」こと「エビカツ」が主人公の成長物語です。
「ネットのレシピは手抜き」とか、「顆粒だしなんてありえない」とか「めんつゆなんて手抜き」とか散々なことを言うエビカツ。ただの無知だ〜!
こんな感じで、序盤こそえびかつに対するイラッとポイントは多いですが、彼はすぐに自分を見つめ直して変わろうと努力する人間なので、応援する気持ちが湧いてきます!
かわいくて優しくてなんでも言うことを受け入れてくれた彼女にプロポーズを断られてからというもの、悲しみに明け暮れながらも、不貞腐れることなく自分が変わることを選択するのです。
自分で調べてみたり、料理にチャレンジしてみたり。ポテンシャルは高いんだよな〜。
主人公がただただムカつく昭和男っていうだけじゃないのがこの作品の魅力ですね!
それに、余計なことを言ったら言っただけ、周りの人たちからきっちりと反撃を喰らいます。読者としても心持ちスッキリ…☺️
後輩の白崎くんや南川ちゃんがイイ味だしててこの作品に欠かせない存在感を放っています。
元彼女も実はけっこうこじらせていた…
そしてもう1人!この作品を語る上で欠かせない登場人物がいます!
それは…えびかつを振った元カノ「鮎美」です。
物語の主人公はエビカツだけなのかと思いきや、この鮎美ちゃんもけっこう拗らせ女子だったのです。
えびかつがこんな男になってしまったのは家庭環境(父の影響)ももちろんありますが、彼女の影響も少なからずあったのではないかと思います。エビカツをエビカツにした女と言いますか、勘違い男を付け上がらせてしまった、昭和男を助長させてしまったある意味で根本的な原因とも言える人物…。
すべてのエネルギーを男受けに全振りした青春時代、女友達はゼロ。その代わり、男にはモテ続けた人生で、最終的にイケメンで建築会社の御曹司であるエビカツをゲットする「勝ち組」の道を進んでいました。
しかし、派手髪の美容師「渚」との出会いが彼女の価値観を揺るがします。
「好きな食べ物なに?」
そう聞かれて咄嗟に自分の好きな食べ物を答えられなかった鮎美。男に迎合して生きてきた鮎美には、自分の好きなことではなく、男が女に求めるものしかわからないのでした。
自由奔放に自分の好きなことで生きている渚に影響を受け、「餃子とビール」や「クラブでダンス」など新しい扉をどんどん開いていく鮎美。
男に受ける自分ではなく、自分らしい自分で生きていきたいと願ってしまい、エビカツのプロポーズを断ることとなりました。
女の我慢が男を勘違いさせ、男の理想が女を追い詰めるんだな〜
だけど「じゃあ、あんたが作ってみろよ」の本当の魅力は…
今のところ1巻(7話 + あとがき)までの配信となっていますが、この最後の6話と7話がとても良かったです!
ポイントとしては
- プライドの高いエビカツが後輩に弱みを見せる
- プライドの高いエビカツが後輩のことを心から誉める
- 鮎美の好きなところが意外なところだった
の3点です。
筑前煮がうまく作れないこと、実は彼女に振られたこと(みんな知ってる)など、自分の失敗を認めて人に頼るというのはなかなか大人の男性にとっては難しいことだと思います。
また、料理好きの白崎がエビカツの筑前煮をアレンジしておいしい和風カレーを作ったときには、素直に「かっこいい」と認めます。
そしてなにより意外だったのが、エビカツは鮎美のことを「しおらしくて従順で男より三歩下がる女」だから好きなわけではなかったのだと言うこと!
鮎美はというと、男受けばかりを狙って生きてきた女性。エビカツが昭和男なら、鮎美は江戸時代の女です。(言いすぎ?)まさにエビカツが好きそ〜〜〜な女性。
でもエビカツにとって鮎美という女性は、何をしててもただただかわいい存在でした。
力が強いことを恥ずかしそうに隠す鮎美、滑って転んでワナワナしちゃう真っ赤な顔の鮎美、背中にカブトムシの番がくっついちゃう鮎美、どんな彼女も愛しくて大好きだったのです。
料理がうまいとか全然関係なくて、条件じゃなく鮎美自身のことを心から愛しているんだなとほっこりします。
1巻を読み終える頃には、エビカツのことを大好きになってしまっていること間違いなしで、だからこそこの作品自体がとても魅力的なのだと思いました。
さいごに
はぁ〜〜☺️ イイ作品でございました。
普段接するリアル昭和男に対して積もり積もったイライラを昇華してくれるガス抜きのような作品でもあり、登場人物たちがかわいくて見守っていきたくなるホッコリとした作品でもあります🎵
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